被相続人Aに、妻B、子C、子D及び妹Eがいる。この場合に関する次のア〜エの記述のうち、⺠法の規定に照らし、正しいものの組合せはどれか。 ア Aが生前に財産の一部をFに贈与し、さらに遺言によって残りの財産の全部をGに遺贈した場合において、Cが遺留分侵害額請求権を行使するときは、FとGが等しい割合で遺留分侵害額を負担する。 イ Cが、Aの相続開始前に家庭裁判所の許可を得て遺留分を放棄していた場合、これに応じてDの遺留分は増加する。 ウ AがGに全財産を遺贈した場合において、Aの相続開始時に、すでにB、C及びDが死亡していたとしても、Eは、Gに対して遺留分侵害額請求をすることはできない。 エ AがGに全財産を遺贈した場合、CがGに対して有する遺留分侵害額請求権は、Cが相続の開始及び遺留分を侵害する当該遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。
1 ア・イ 2 ア・エ 3 イ・ウ 4 イ・エ 5 ウ・エ
ア 誤 り 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる(⺠法1046条1項)。そして、同法1047条1項1号は、遺留分侵害額の負担に関する受遺者と受贈者の順序について、「受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に負担する」と規定している。したがって、本記述の場合、受遺者であるGが、受贈者であるFより先に、遺留分侵害額を負担する。
イ 誤 り相続の開始前における遺留分の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り、その効力を生ずる(同法1049条1項)。そして、共同相続人の1人のした遺留分の放棄は、他の各共同相続人の遺留分に影響を及ぼさない(同条2項)。このように、遺留分の放棄の効果は、単に被相続人が自由に処分できる財産の割合が増えるだけにとどまる。なお、本問の場合、Dの遺留分の割合は、遺留分を算定するための財産の価額の2分の1に、法定相続分の4分の1を乗じた割合(8分の1)となる(同法1042条1項2号、同条2項、900条1号、4号)。
ウ 正しい ⺠法が認めている遺留分権利者は、兄弟姉妹を除いた相続人である(同法1042条1項柱書)。したがって、被相続人Aの妹であるEは、そもそも遺留分を受ける権利を有していない。
エ 正しい 遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から10年を経過したときも、同様である(同法1048条)。
以上により、正しいものの組合せは肢5であり、正解は5となる。