肥満症治療に立ちはだかる偏見――新薬への期待と課題
肥満症に苦しむ患者は少なくない。遺伝や生活習慣など複数の要因が絡み合うにもかかわらず、「自己管理の問題」とみなされる偏見が根強く、適切な治療機会を阻んでいる側面がある。そのような中、国内で新たな肥満症治療薬の販売が開始され、医療関係者の間には期待の声が上がっている。 ◇国内2800万人が肥満肥満は体格指数(BMI)が25以上を指す。一方で「肥満症」はBMI25以上かつ、2型糖尿病や高血圧といった11種の合併症のいずれかを伴う場合を指し、治療対象となる。世界の肥満人口は約25億人、国内では約2800万人に達すると推計される。特に中高年層での増加が顕著だ。 ◇肥満関連疾患と死亡リスクの上昇肥満に伴う虚血性心疾患、脳血管障害、慢性腎臓病などの罹患率も上昇傾向にある。BMIが30以上40未満の群では、標準体形者と比較して男性の死亡リスクが1.36倍、女性は1.37倍に高まるとの調査報告がある。 ◇…