純国産SAFの供給開始、航空燃料の脱炭素を目指す


2025年5月から、原料の調達から生産・供給までを国内で完結させる「純国産」SAF(持続可能な航空燃料)の供給が始まった。関西空港近くの滑走路では、式典に集まった航空会社や石油元売り、プラント建設会社の関係者が、中国・上海行き旅客機の離陸を見送り、純国産SAFの初使用を見届けた。

生産拠点は大阪・堺市にある製油所である。各地の飲食店から回収された廃食油が大型トラックで持ち込まれ、幅約40メートルの加熱装置と蒸留塔で精製される。原料100リットルから85~90リットルのSAFが生成され、同時にナフサや軽油も生産可能だ。

プロジェクトはコスモ石油、日揮ホールディングス、レボインターナショナルの三社が設立した合弁会社により推進され、国内一貫のサプライチェーンを構築する点に大きな意義がある。

SAFは航空燃料を100%置き換えた場合、CO₂排出量を約8割削減できるとされるが、現状では既存燃料にごく一部を混合して使用している。課題は価格であり、石油系航空燃料の3~5倍に達しているため、2030年に燃料の10%をSAFに切り替える各社の目標達成にはさらなるコスト低減が不可欠である。

原料コストの多くを占める廃食油の安定的かつ効率的な回収がカギとなる。事業所からは年間40万トン発生し9割が回収される一方、家庭からは9割以上が未回収である。全日空や日本航空は回収ボトルの配布や店舗設置型回収ボックスを導入し、神戸市も公共施設で実証実験を開始した。

さらに、カクヤスグループは配達員が飲食店を回って廃食油を回収し、これまでに120トンを集めた。堺市の製油所には全国約3万8千か所から毎日100キロリットル以上の廃食油が持ち込まれており、回収体制のさらなる効率化が求められている。

サファイアスカイエナジーの西村COOは、DXの活用による回収効率向上や製造プラントの最適化を進め、2030年の需要増加に対応する考えを示している。

国内での一貫生産により、エネルギー安全保障の観点でも国産SAFの意義は大きい。国際競争力のある価格で供給できれば、海外航空会社が日本を避ける事態を回避できるとの期待が高まる。

取材後記として、これまで欧米企業に先行され輸入に頼らざるを得なかった日本だが、純国産プロジェクトが第一歩を踏み出した。今後の価格動向と供給の安定性に注目が集まる。


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