
社員が適応障害を発症すると、職場での働きぶりや復職プロセスに大きな影響を及ぼす。適応障害は、職場環境の変化や人間関係のトラブルなど明確なストレス要因が引き金となり、出来事から3か月以内に抑うつ状態や欠勤の増加などの症状が現れる診断名である。日常業務への支障は一時的であるものの、気分が落ち込みエネルギーが乏しくなるため、うつ病と間違われやすいという特徴を有する。
適応障害の診断基準によれば、ストレス要因が解消されれば6か月以内に症状が改善するケースが多い。一方で、うつ病は複数の要因が重なって発症し、強い抑うつ状態が長期に続くため、原因の特定が困難であることが多い。したがって、適応障害ではストレス因の除去と職場環境の調整によって早期回復が見込めるが、うつ病では長期的な治療計画と包括的なケアが必要となる点で異なる。
組織が留意すべきは、たとえ「うつ病」の診断名が付されていても、適応障害の可能性を疑い、ストレス要因の有無を確認することである。復職支援にあたっては、まず産業医や専門カウンセラーの助言を得たうえで、同部署・同上司への復帰が本当に適切かを検討する。適応障害と診断された場合は、業務内容や配置先の変更などを迅速に検討し、再発防止を図ることが成果を上げるための重要な鍵となるのである。