小笠原諸島の在来種。ブナ科植物なし。針葉樹もヒノキ科のシマムロの1種のみ。哺乳類はオガサワラオオコウモリの1種。爬虫類は2種。両生類もなし。
アンブレラ種 生息し続けるために大面積の生息場所を必要とする種
キーストーン種 生息場所における生物間相互作用のかなめとなる種 他の植物が果実を実らせない時期に果実をつける植物
水文学 すいもんがく hydrology
地球上の水の循環について研究する科学。地球上の水の発現,物理的・化学的性質,変態,結合,運動を扱う。特に降雨,降雪などの形で地上に落下する水が,海に流れ込み,蒸発して大気中に戻るまでの過程を追究する。水文学は地球物理学の一部門で,気象学的考察が中心となっている水文気象学,地質とその構造などに関連する地下水の動向について研究する水文地質学,降水と河川水量との関係を解明する河川水文学などを包含する。現在ではおもに河川開発,洪水対策,流域管理,土地利用などの事業の進展に伴って発展してきている。
平成30(2018)年度第2学期単位認定試験
問 1 次の文章の空白部分にあてはまる語として適当なものを,以下の①~④の中から一つ選びなさい。生物の生息が可能な領域は,地球の表面付近のごく狭い範囲に限られる。この,生物が生きて存在する地球上の領域のことを()と称する。
① ハビタット→個体群の生息場所
② 生態系
③ バイオーム→植生の外観に基づいて分類される植物群系 または 他の生物の生息状況も加味して生物群集全体を分類した類型
④ 生物圏
正解④
問 2 以下の①~④の文の中から,誤っているものを一つ選びなさい。
① 砂浜は植物の生育にとっては厳しい場所である。海水を直接かぶらない場所であっても,強風,海水中の塩分にくわえて,晴天の日中には砂の温度は気温よりもはるかに高くなることが,植物の生育を妨げる。
② 日本の砂浜で,最も海に近い側で生育するのがクロマツなどマツの仲間である。これら大型の樹木が風や海水の影響を和らげた内陸側には,コウボウムギやオニシバなどの草本植物が生育する。
③ 砂浜で生育する植物は,風衝を避けるために丈が低く匍匐性であったり,砂の中に長い地下茎あるいは匍匐茎を伸ばしていたりしていて飛ばされにくい,葉は肉厚で丈夫なうえ水分を蓄えやすい,葉の表面に光沢があり蒸散を防ぎやすい,砂に埋もれても茎を伸ばして砂の上で再び広げることができる,といった特性を1つ以上備えている。
④ 砂浜では,海からの影響の強弱に応じて植物の分布が決まる。山地では標高が植物にとっての環境の主要な目安になるのに対して,砂浜では海からの距離が,植物にとって意味のある自然環境条件を反映する指標となっている。
問2正解(誤っている文)は② 最も海に近い側で生育するのがコウボウムギやオニシバです。海水由来の塩分の影響を強く受けるところでは、オカヒジキのように塩分に耐えられる植物がより海側に見られることもあります。ハマヒルガオやハマニガナ、ハマボウフウなども、比較的海に近いところで生育できます。これらの内陸側には、ハマエンドウやハマゴウ、ハマダイコン、テリハノイバラなどの植物が生えます。樹木が生えるようになるのは、風や潮の影響が弱まってからです。海に近い場所に生育するのはクロマツ、トベラ、ウバメガシなどの種ですが、マツの仲間に限られるわけではありません。
問 3 以下の①~④の文の中から,誤っているものを一つ選びなさい。
① 木の幹に穴を開けたり,あるいは既に開いている穴(樹洞)を利用したりして巣を作る性質のことを,樹洞営巣性という。キツツキの仲間は,自力で幹に穴を開けて巣を掘ることができる。
② 鳥の中には,地面に営巣する種類もいる。中には,地面にそのまま,あるいはわずかにくぼみを作るぐらいで卵を産んで温めるような種類もある。
③ 低木の枝の間やササの茂みは,人間による攻撃を受けやすいため,鳥の営巣場所としては利用されない。
④ 鳥が巣を作る材料として利用するのは枯れ枝や枯葉,土など自然に存在するものだけとは限らない。鳥の種によっては,人間が作ったものを利用して巣を作ることもある。
問3正解(誤っている文の番号)は③ 樹洞営巣性の動物は少なくありません。その中には、キツツキの仲間のように自力で樹洞を作ることができるものもいれば、ムササビやリスのように、既にできている樹洞を利用して営巣するものもいます。鳥類でもシジュウカラなどは、樹洞に営巣するものの自力では樹洞を作ることができません。地面に営巣する鳥には、一応巣のようなものを作る種もあれば、地面にそのまま、あるいはわずかにくぼみを作るぐらいで卵を産んで温めるような種類もあります。このような種としては、キジ、ヤマドリ、ケリ、ヒバリ、ヨタカなどが知られています。低木の枝の間に巣をかける種類もあります。モズ、ホオジロ、アオジなどがそうした場所に巣をかけることが知られています。ウグイスも同じように地面からの高さが低い場所に営巣しますが、低木よりもササやススキの桿を利用して、ササやススキの葉で作られた巣をかけます。従って、選択肢3の文は誤りです。以上の内容については、印刷教材5.2節を読み返して復習してください。なお、選択肢4については、ハシブトガラスが針金のハンガーやビニールひもを巣材に利用した例が知られています。放送授業(第10回)でも、写真を紹介しました。
問 4 次の文章の空白部分には全て同一の語が入る。空白部分にあてはまる語として適当なものを,以下の①~④の中から一つ選びなさい。水中で一次生産の中心となるのが,()である。()といっても,その中には多様な生物群が含まれる。酸素を発生させる光合成を行う生物全体から,維管束植物と蘚類,苔類を除いたもの全てを,ひとまとめにして()と称しているからである。
① 地衣類 ② ミズゴケ類 ③ プランクトン ④ 藻類
問4正解(空白を埋めるのにふさわしい語)は④(藻類)藻類には、土壌中に生息するもの、菌類と共生して陸上で生活するもの(共生相手の菌類とあわせて地衣類とよばれる)など、さまざまな場所に生息するものがありますが、大半は水中に生きています。紅藻、緑藻、接合藻、車軸藻、珪藻、渦鞭毛藻、黄緑藻、褐藻、シアノバクテリア(藍藻)などを挙げることができますが、シアノバクテリアは原核生物、他は真核生物です。光合成を行い、水中における一次生産の中心となっています。地衣類は、上の説明にもあるように、藻類と菌類が共生して生活しているものです。ミズゴケ類は、コケ植物に属するミズゴケ科ミズゴケ属に含まれる種を指します。主に湿地に生育し、地面を密に覆ってクッションのような外観と触感がある群落を作ります。プランクトンは、水中で浮遊生活を行う生物を指します。藻類の中には浮遊生活を行うもの(植物プランクトン)もいますが、一次生産をしない(消費者である)プランクトンすなわち動物プランクトンも存在するので、この選択肢は誤りです。藻類については、印刷教材6.1節に説明したので、適宜読み返し復習してください。
問 5 ロトカ-ボルテラの方程式で表されるような形で,捕食者と被食者の個体数が変化することは実際にはなかなか起こらない。その理由として誤っているものを,以下の①~④の中から一つ選びなさい。
① 野外では,一種類の捕食者が一種類の被食者のみを利用することは稀で,捕食者も被食者も複数いるため。
② 被食者の個体数が減少する要因としては,捕食を受ける以外に,食物不足や病気なども実際には重要なため。
③ 捕食者が被食者を食い尽くしてしまい,食物不足で自らも死んでしまうことが頻繁に起こっているため。
④ 野外では,捕食者と被食者が同じ場所にいても,捕食者が被食者を見つけられなかったり,被食者がうまく逃げたり隠れたりできることがあるため。
問5正解(誤っている文の番号)は③ 第7章第1節からの出題です。ここには、捕食者も被食者も一種ではないこと,捕食者をさらに食べる上位の捕食者もいること、捕食者や被食者それぞれの間での種間競争が生じること、被食者が食物不足で減少し得ること、捕食者と被食者の遭遇は不確実であり、遭遇したとしても捕食者が被食者を発見し捕食することができるとは限らないこと、を、ロトカ-ボルテラの方程式が必ずしも成り立たない理由として説明しています。選択肢1、2、4の内容は、いずれもこの説明に含まれます。捕食者が一帯にいる被食者を食い尽くす状況は、理論的には起こりえますが、現実には、被食者が少なくなると捕食者が被食者に遭遇することが極めて困難になり、食い尽くすまでにはなかなか至りません。
問 6 以下の①~④の文の中から,正しいものを一つ選びなさい。
① 乾燥地に生育するマメ科のアカシアの仲間の中には,野火(山火事)の時以外には自然には生じ得ないような高温を受けないと,種子が発芽できる状態にならない種類がある。
② 草食動物による採食は,多数の個体により集中的になされた場合には,その場所の植生に大きなダメージを与えることがある。草食動物が多く生息する熱帯草原でキク科の草本植物が多く生育するのは,キク科の植物が食べられても再生しやすい性質を備えているからである。 →イネ
③ 過放牧などの結果,樹木を伴う植生から樹木が失われ,限られた種類の草本植物だけとなり,最後には裸地化する,という植生の変化は,一般的な植生遷移の過程とちょうど逆方向の変化である。このような形で植生が変化することを,進行遷移という。 →退行
④ 河川の水辺に生息するコチドリやイカルチドリは,砂礫に覆われた河原を好むが,増水がない年が続いて砂礫地が植生に覆われると,ヨシなどの植物の茎に巣をかけるようになる。
問6正解(正しい文)は① アカシアの種子の発芽については、印刷教材8.4節をご覧ください。選択肢2の文章は、キク科ではなくイネ科の植物のことです。これについても8.4節に説明があります。選択肢3は、進行遷移となっている部分が正しくは退行遷移です。進行遷移では意味が逆になってしまいます。選択肢4の文のように、状況に応じて営巣の仕方を変えることができる器用さは、大半の鳥類にはありません。ハシブトガラスのように、営巣に適した樹木がなければ鉄塔や電柱に営巣するものもありますが、彼らにしても、樹木に近い構造のものを見つけて営巣しているのです。コチドリやイカルチドリなど、砂礫値に営巣する鳥類の場合、植生が発達して砂礫地がなくなってしまうと営巣ができなくなってしまいます。そのため、繁殖(営巣)に適した砂礫地の確保は、こうした種の保全のために欠かすことができません。
問 7 次の二つの文に関する以下の①~④の説明の中から,正しいものを一つ選びなさい。
(ア)都市緑地の植生の管理においては,人間の利用がまず考慮される。そのため,人の視線を遮り,あるいは歩行の邪魔になる位置にある植物は避けられる傾向が強い。その結果,都市緑地の植生においては,低木やたけの高い草本植物が取り除かれ,人間の背たけ前後の高さでは植被率が低く保たれることが普通である。
(イ)都市での環境条件に耐え得る,あるいはそれを利用できる生物,すなわち都市適応種,あるいは都市利用種とされる生物は,多くの場合スペシャリストと呼ばれるものである。また,都市の生物においては移入種が占める割合が高いことも指摘されている。
① (ア)(イ)ともに正しい。
② (ア)は正しいが(イ)は誤っている。
③ (イ)は正しいが(ア)は誤っている。
④ (ア)(イ)ともに誤っている。
問7正解は②(ア)は正しい(イ)は誤っている 第10章からの出題です。都市の植生の多くは計画的に植栽され,その後も人間により日常的に管理されています。植生の管理においては,人間の休息やレクリエーションの場としての利用が優先されます。すなわち,人間が活動しやすい形に植生や個々の植物が維持されやすいのです。その結果,低木やたけの高い草本植物が取り除かれ,人間の背たけ前後の高さでは植被率が非常に低くなる傾向が,都市の植生においては顕著に見られます(第1節(3))。従って、(ア)は正しいです。人間による活動が強く作用する場所では,食物についても利用空間についても,スペシャリストが減少しジェネラリストが増えることが普通です。人間の活動に適した土地,人間の活動のために作られた空間や構造物を生息場所として利用できる生物や,人間による廃棄物を食物として利用できる生物は,都市でも生きていくことができます。ジェネラリスト種の多くは,そうできる可能性をもっているのです(第3節(1))。
問 8 次の文章の空白部分にあてはまる語として適当なものを,以下の①~④の中から一つ選びなさい。都市だけでなく,農業基盤や社会基盤の整備に伴う土地や水路の人工化が進んだ農村でも,生物多様性の低下が顕著にみられる。しかし一方で,伝統的な農法や土地管理のもとで高い生物多様性が保たれてきた農業地域もある。日本における伝統的な農業地域である()は,その代表的な例と言える。
① 奥山 ② 里山 ③ 社寺林 ④ 水郷
問8正解(空白を埋めるのにふさわしい語)は②(里山) 第11章からの出題です。奥山は、日常的な生活の場である里山に対し、里から離れていて人が立ち入る機会が限られている林を指します。社寺林は寺社に付随して維持されている林であり、農業地域というわけではありません。水郷も、水辺の村、あるいは河川下流部などで多くの水域が広がる場所を指し、伝統的な農業地域とは限りません。
問 9 次の文章に引いた2箇所の下線の部分の説明として誤っているものを,以下の①~④の中から一つ選びなさい。生物の種間の密接な関係は,それに関わる生物種の形質や行動を時として変化させ得る。そのような種間関係は,捕食や寄生のように(ア)一方を犠牲にすることによって他方が利益を得る関係,同じ資源をめぐる競争の関係,そして(イ)相利共生関係に大きく分けることができる。
① 下線部(ア)の関係の例としては,カッコウがオナガなどの鳥に対して行う托卵を挙げることができる。
② 下線部(ア)の関係が,それに関わる生物種の形質や行動を変化させる様子は,軍事的に対立する2国間の関係,すなわち軍拡競争にしばしば例えられる。
③ イチジク類とイチジクコバチ類の関係は,下線部(イ)の関係が,それに関わる生物種の形質や行動を変化させた例と考えることができる。
④ ダーウィンフィンチのくちばしの大きさが島によって異なるのは,下線部(イ)の関係から説明することができる。
問9正解(誤っている説明)は④ ダーウィンフィンチの嘴の大きさが島によって異なるのは、本来同じような食物を利用する習性のある種が一つの島で共存するために、異なる大きさの食物を利用するように進化した結果であると考えられています。ダーウィンフィンチが自らの意志でくちばしの大きさを変えたわけではないことに注意してください。利用する食物のサイズが変わってくると、そのサイズの食物に適した大きさのくちばしを持つ個体が有利になり、より多くの子孫を残しやすくなります。そこで自然選択のプロセスが作用して、くちばしの大きさに徐々に差が生じたと考えることができます。
問10 以下の①~④の文の中から,誤っているものを一つ選びなさい。
① 海洋島の場合,生物の特定のグループが多様な種に分化していることがしばしばある。ガラパゴス諸島のダーウィンフィンチ類の例が有名だが,ハワイ諸島のハワイミツスイ類やハワイショウジョウバエ類,小笠原諸島の陸産貝類も同様である。
② 生物の特定のグループが多様な種から構成され,グループ全体としては多様な資源を利用しているという状況は,海洋島にかつて何らかの理由で特定のグループに属する多数の種が上陸しそのまま定着して今日に至っていることを示唆する。
③ 海洋島に固有な生物種の多くは外来種の侵入に対して脆弱であり,外来種の侵入と分布拡大によって各地で衰退しつつある。
④ 小笠原諸島では,グリーンアノール,ヤギ,ウシガエルなど島の外から持ち込まれた動物や,アカギ,モクマオウといった外来の植物が,捕食や種間競争を通じて小笠原諸島に元から生息していた動植物を減らしている。
問10正解(誤っている文章)は② 生物の特定のグループが多様な種から構成され、グループ全体では多様な資源を利用しているという状況は、海洋島にかつて上陸した種が、その後多様な種に分化した可能性を示唆するものです。大陸から離れた島には渡ってくる種が少ないため、利用可能な資源(あるいはニッチ)があってもそれを利用できる種がおらず、利用されないままの状態になっていることが起こりやすいのです。利用されていない資源を利用するようになった個体の子孫では、その資源の利用に適した形質を持つ個体ほど、生き残りに有利になります。そして、異なる資源を利用する個体群の間では交雑も起こりにくくなるため、それぞれの資源の利用に見合った形質が自然選択によって定着し、長い時間を経てそれぞれの個体群が新しい種にまで分化していったと考えられます。このような過程を適応放散と呼びます。①~③については印刷教材第15章第1節(2)「海洋島の生物群集の特徴」を、④については第15章第2節「小笠原諸島と伊豆諸島」を、それぞれ参照し復習してください