現代における教育の変化
20世紀後半の日本の教育は児童生徒を中心に展開されてきた。そして、高校進学率はほぼ100%、高校卒業後の進学率(短期大学、4年制大学、専門学校)も含め約80%になった[1]。そのため、教育とは一般的に学校教育を思い浮かべる人が多くなっている。
この背景には、20世紀後半の日本型雇用が影響している。長期雇用、年功序列、新卒採用、企業内教育訓練が日本型雇用の特徴である。このことにより、大人の教育は正社員を対象とした企業内訓練が中心となり、それ以外の大人の教育は重視されなかった。
教育は、日本型雇用に合わせ、新卒一括採用に合う人材を育成する、普通科志向と学歴志向が強まった。
1990年代後半以降は、経済環境が変化し、日本型雇用を見直すようになった。多くの企業は新卒一括採用を減らし、有期雇用や非正規雇用の枠を拡大し続けている。1992年の非正規雇用労働者は1053万人であり全労働者のうち21.7%であり。2017年には非正規雇用労働者は2132万人であり全労働者のうち38.1%となった[2]。
1つの企業で働き続ける事を前提とした企業内教育訓練を通して技能形成は難しくなった。自ら技能形成、キャリアを自らデザインすることが求められるようになった。企業に頼らず学び続ける必要性が高まった。
2020年度から進められる学習指導要領改定は、「何を知っているか」というcontents base から「何ができるか」というcompetency baseへの転換が打ち出された。急速に進むglobalization、技術革新、加速する少子高齢化、地方創生、格差拡大、貧困化などの社会変化が進んでいる。教育も変化が求められている。
教育は、いつの時代も変化が必要とされてきた。子どもが小さい大人でなくなり子どもの存在が確立されるようになると、初等教育制度が確立するようになった。職業訓練が必要になれば各種技能学校が作られた。現代においても同様である。特に、技術革新に教育が対応できていないことが、新型コロナ感染症において露呈した。教育活動が、ある施設に集めて集団的に行うことが必要なのかについて疑問が出された。また、集団授業が不可能な状態になった場合や集団授業ができない学習者に、どう教育を提供するかも課題である。通信制高校や通信制大学などの通信制学校の充実は1つの可能性がある。全世代に、時間に関係なく、教育の機会を提供できる。この利点は大きい。いつでも学び直しが可能になるような教育変化が望ましいと考える。
教育学を学ぶ意義
教育学は(1)教育の本質や究極目標に迫ろうとする教育哲学、(2)教育思想、教育事実の歴史的発展を解明しようとする教育史、(3)教育と社会との関係を究明しようとする教育社会学、(4)教育の制度や学校という組織を分析しようとする教育制度学や教育行政学、(5)諸外国の教育を比較研究する比較教育学、(6)授業、指導の方法や管理のあり方に関心をもち、実践的、技術的な傾向のある教育心理学、教育経営学などに分化した。
教育学を学ぶ意義として、変化多様化する教育ニーズに対応するためであると考える。特にキャリア教育については、学習者も私自身も考えなければならない課題である。
2006(平成18)年、教育基本法の改正が行われた。これにより、「教育の目標」の一つに、「個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと」(2条2号)が規定され、キャリア教育の考え方が反映されることとなった。中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)」2011(平成23)年によれば、キャリア教育とは「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」とされる。キャリア教育は、就学前段階から初等中等教育・高等教育かけ、学校から社会への移行に困難を抱える若者を支援する様々な機関においても実践されるものとなった。
児童生徒は、自身の物の見方や行動の仕方に基づき、自分と社会との関係を捉え自分を方向付けようとする。そのため、教員は、児童生徒が各発達段階に応じて、自身のキャリアの課題を達成していくことができるように、一人ひとりを支援していくという視点をもって指導することが必要となる。
教員の支援は、児童生徒にとって学校に在籍している間におけるキャリアについての考えを発展させるだけではなく、生涯を通じたキャリアの発達へと発展していくための基盤となるようになることが求められている。
今日の変化が激しい社会状態においては、ただ知識教養を与えることだけが教育ニーズではなく、生涯の切り開き方を含また教育が必要であり。人の生涯に携わる教育学の挑戦であると思う。
参考文献
植上 一希、寺崎 里水 (2018)『わかる・役立つ 教育学入門』大月書店
坂田 仰、黒川 雅子、 山田 知代 (2019)『学校現場の課題から学ぶ教育学入門』学事出版
[1] 平成29年度「学校基本調査」
[2] 2017年「就業構造基本調査」