2023年7月、東京都が新宿・歌舞伎町に開設した子ども支援施設「きみまも」で、利用者の女性へのわいせつ行為が発覚し、20代の男性2名が逮捕されました。この施設は、家庭や学校に居場所のない子どもたちが集まる「トー横」周辺で犯罪やトラブルに巻き込まれることを防ぐために設立されましたが、その管理体制に問題が浮上しています。
「きみまも」は、住所や名前を明かさなくても自由に利用できるフリースペースとして運営されており、当初は多くの子どもたちが利用していました。しかし、その自由度が高い運営方針が逆に悪用され、不特定多数の大人が出入りするようになり、犯罪行為が行われる場となってしまったのです。警視庁は、これらの事態を重く見て施設の管理体制を厳しく見直すとともに、犯罪の実態を調査しています。
「きみまも」の運営と課題
「きみまも」は、家庭や学校に居場所のない子どもたちが「トー横」に集まり、性犯罪や薬物乱用などの危険な行為に巻き込まれることを防ぐために開設されました。施設はフリースペースとして運営されており、お菓子や軽食の提供、Wi-Fiや携帯電話の充電器の無料利用が可能です。しかし、施設内での犯罪行為や、オーバードーズ目的で訪れる若者が目立つようになり、その運営方法に批判が集まっています。
利用者からは「施設内の治安が悪化している」という声が聞かれ、特に混雑時にはスタッフが全員を把握しきれない状況が生まれていました。こうした問題を受け、東京都は管理体制を見直し、利用者の本人確認を徹底する方針を打ち出しましたが、これに対しては「名前や住所を明かすことには抵抗がある」という意見もあり、支援の対象となる子どもたちが利用しにくくなる懸念が指摘されています。
「トー横」周辺の現状と警視庁の対応
「トー横」周辺は深夜や早朝でも多くの子どもや若者が集まるエリアであり、犯罪やトラブルが絶えない状況です。警視庁はこれに対して、一斉補導を行い、犯罪に巻き込まれるリスクを減らすための活動を強化しています。2023年には、前年同時期よりも多い83人が補導されましたが、依然として問題は解決されていません。
専門家の提言と今後の課題
早稲田大学の小西暁和教授は、「きみまも」のような施設は、路上ではなく安全な場所で子どもたちが過ごすために重要だと指摘しています。しかし、歓楽街という場所の特性上、犯罪意図を持つ大人が入り込むリスクが高く、施設の管理を厳格にする必要があるとしています。一方で、管理が厳格すぎると子どもたちが利用しにくくなるため、柔軟な対応が求められると述べています。
また、小西教授は、子どもたちが住む地域に「第3の居場所」を設けることの重要性を強調しています。これにより、子どもたちがわざわざ繁華街に出向く必要がなくなり、犯罪リスクを減らすことが可能です。トー横に居場所を求める背景には、家庭や学校での問題があり、大人がこれらを理解し、支援することが求められています。
今回の事件を契機に、東京都や支援団体は子どもたちの安全を確保するための対策を講じていますが、まだ多くの課題が残されています。これからも、子どもたちが安心して過ごせる環境を整えるための取り組みが求められます。