欧州最高裁判所は、Appleに対して130億ユーロ(約14兆円)の未払い税金をアイルランドに支払うよう命じ、8年間にわたる論争に終止符を打ちました。この問題は、2016年に欧州委員会がアイルランドに対してAppleに違法な税制優遇を与えていると非難したことから始まりましたが、アイルランド政府は一貫してこれに反対し、税金の支払いは不要であると主張していました。しかし、アイルランド政府は今回の判決を尊重すると述べています。
一方、Appleはこの決定に失望を表明し、欧州委員会が「ルールを遡及的に変更しようとしている」と非難しました。Appleは「これまで常に適切に税金を支払ってきた」と主張し、特別な取り決めは存在しないと強調しました。
また、同日に別の欧州裁判所の判決により、Googleも市場支配力の濫用に対して24億ユーロ(約2.4兆円)の罰金を支払うよう命じられました。これは、長年にわたる法的闘争の終結を意味します。
Appleのケース
Appleのケースにおいて、欧州司法裁判所は「欧州委員会の2016年の決定を最終的に支持し、アイルランドがAppleに違法な支援を行ったことを確認」しました。この判決により、Appleとアイルランド政府との間で長引いていた法的なやり取りに終止符が打たれました。
この問題は、1991年から2014年までの期間における、アイルランドに拠点を置くAppleの2つの子会社が生み出した利益の税務処理に関連しています。これらの税制上の取り決めは、他の企業が同様の優遇措置を受けられないため、違法とされました。当時、欧州委員会は多国籍企業が創造的な財務手段を用いて税金を軽減していると考え、それを取り締まろうとしていました。
しかし、この判決は2020年にアイルランドの控訴を受けて下級裁判所で覆されましたが、今回、上級裁判所がその判決を法的誤りとして取り消しました。
アイルランドが反対する理由
この判決により、アイルランドはAppleから未収の税金を回収しなければならなくなりましたが、アイルランド政府はこれを避けようと長年にわたって法廷闘争を続けてきました。アイルランド政府は、Appleが過去の税金を支払う必要がないと主張し、大企業を誘致するためにはその損失は価値があると見なしていました。
アイルランドはEUの中でも特に低い法人税率を誇り、Appleは欧州、中東、アフリカ地域の拠点をアイルランドに置いています。このため、アイルランド政府は低税率を維持することで、引き続き大企業を国内に誘致しようとしています。
しかし、EUは今回、アイルランドがAppleに非常に低い税率を適用したことで不公正な補助金を与えたと判断し、国家援助を規制する強力な権限を行使しました。これにより、欧州委員会は大企業がルールを曲げるのを防ぐために一大勝利を収めた形となりました。
Googleのケース
Googleもまた、欧州最高裁判所によって市場支配力の濫用に対して24億ユーロの罰金を支払うよう命じられました。これは2017年に欧州委員会が課した罰金であり、Googleはこれを不服として訴えていましたが、今回の判決によりその訴えは却下されました。Googleはこの判決に失望を表明し、すでに2017年には決定に従って必要な変更を行ったと強調しました。
今回の判決は、欧州委員会が大企業に対して課した最大の罰金であり、その後、Googleにはさらに43億ユーロの罰金が課せられることとなりました。この罰金は、GoogleがAndroidソフトウェアを使用して自社のアプリを不正に宣伝したとされる件に関連しています。
この一連の判決は、欧州司法が大企業の税金や市場支配に対する厳しい姿勢を示すものであり、今後の企業行動にも大きな影響を与えることが予想されます。