20200124暮らしに役立つバイオサイエンス、放送大学
酵素は活性化エネルギーのみ影響、化学平衡には影響しない。よって、平衡状態における生成物の割合は変化しない。
染色体DNAが細胞分裂に呼応して複製されるのに対し、プラスミドは自己複製能を持つため、宿主細胞の染色体DNAの複製とは独立して複製される。
サルモネラ菌は家畜の飼料に入っていることがある。
乳酸菌利用食品→なれ鮨(注意)、チーズ(当然)
ペニシリンはジャーメンターでpH制御、日本酒は乳酸菌でpHを下げる
2019年度第1学期過去問
問 1 次の①~⑤の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
①生物は,微生物,植物,動物のドメインに分類することが可能である。 →バクテリア(真正細菌)、アーキア(古細菌または原始菌)、ユーカリア(真核生物)
②大腸菌は酵母より大きく,酵母はカビより小さい。 →大腸菌数μm、酵母10μm、カビ数十μm(胞子)1mm程度(菌糸)
③胞子はバクテリアの休眠状態であるため,環境の変化に弱い。
④大腸菌と酵母は異なるドメインに分類される。 →酵母、カビ、一部藻類がユーカリアに含まれる
⑤カビ類はバクテリアに比べると比較的単純な形をしている。
正解④
問 2 次のA~Eは,微生物に関する重要な技術開発や学術的な発見についての記述である。これらが起こった時期を古いものから時代順に正しく並べたものを,①~⑤のうちから一つ選びなさい。
A種麹の製造技術の開発、B顕微鏡を用いた微生物の観察、C炭疽菌の分離培養、D低温殺菌法の開発、Eビールの製造技術の開発
① A → E → B → C → D
② A → E → B → D → C
③ E → A → B → C → D
④ E → A → B → D → C
⑤ E → B → A → D → C
正解④
問 3 好熱菌は55℃以上でも生育することができる微生物の総称である。好熱菌が高温環境で生きていくことができる理由について,次の①~⑤の記述のうち誤っているものを一つ選びなさい。
① 長鎖分岐型ポリアミン分子やヒストンタンパク質による核酸の高温による安定性の維持。
② アミノ酸の疎水結合や静電的相互作用を利用したタンパク質の耐熱化。
③ ゲノム中のGC含有率[1]の高さによる構造の柔らかさの向上。
④ 膜を構成する脂質成分の高温での安定化。
⑤ 超らせん構造[2]の維持による高温でのゲノムの安定化。
正解③
問 4 ある任意の温度で加熱したとき,生菌数が1/10に減少させるのに必要な加熱時間をD値といい,その微生物の温度感受性を示す指標として使われている。重篤な食中毒を引き起こすボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の121℃におけるD値は4分とされている。この微生物を121℃で12分間加熱したとき,どれくらいの割合が死滅するか。次の①~⑤のうち,正しいものを一つ選びなさい。
① 90% ② 99% ③ 99.9% ④ 99.99% ⑤ 99.999%
正解③
問 5 次の文章は,ある発酵食品の作り方を記述している。何を作っているのか,①~⑤のうちから一つ選びなさい。
「先ず,原料乳を熱で殺菌し,これに乳酸菌等の微生物が含まれるスターターを添加し発酵させます。乳酸菌は原料乳の中で増殖し,乳酸等の酸を出し原料乳のpHを低下させます。これに塩化カルシウムとレンネットと呼ばれる酵素を添加して,原乳中のタンパク質を分解変成させ凝固させます。」
① 乳酸菌飲料 ② ヨーグルト ③ チーズ ④ ケフィア ⑤ 発酵乳
正解③
問 6 人類に貢献してくれる微生物の四天王を決めたい。候補はたくさん考えられるが,その推薦理由として,次の①~⑤の記述のうち誤っているものを一つ選びなさい。
① 先ずはお酒である。お酒造りに欠かせない酵母Saccharomyces cerevisiaeを推薦する。
② おいしさを追求すれば,グルタミン酸は現代の料理には欠かせない。それを生産してくれるCorynebacterium glutamicumを推薦する。
③ ヨーグルトは牛乳の加工品としては最高の食品である。乳酸菌の代表を選択するのは難しいが枯草菌Bacillus subtilisを推薦する。→乳酸菌
④ 料理に欠かせない発酵調味料として酢を一番に挙げたい。酢を作ってくれる酢酸菌の代表としてAcetobacter acetiを推薦する。
⑤ なんと言っても抗生物質の発見に欠かせなかったPenicillium chrysogenumを外すことはできない。
正解③
問7 発酵タンク(中規模通気撹拌型培養装置)を用いて,ある微生物を好気的に培養する時,培地中の酸素濃度を増やす方法として,次の①~⑤の記述のうち誤っているものを一つ選びなさい。
① 邪魔板を設置する。
② 撹拌翼の位置を調節する。
③ 回転速度を上げる。
④ 培地に吹き込む空気の通気量を増やす。
⑤ タンク内の圧力を下げて,排気量を増やす。
正解⑤
問 8 ある代謝系において,出発物質がAであり,順次代謝され最終的にはDが生産される事が明らかになっている(A→B→C→D)。また,最終生産物質DがA→B,の反応を阻害することも確認されている。Cを大量に生産したいが,どのような変異株を分離すれば良いのかを,次の①~⑤のうちから一つ選びなさい。
① C→Dの反応を触媒する酵素をコードする遺伝子の欠損株を分離する。
② A→Bの反応を触媒する酵素をコードする遺伝子の欠損株を分離する。
③ C→Dの反応を触媒する酵素を大量に生産する変異株を取得する。
④ B→Cの反応を触媒する酵素をコードする遺伝子の欠損株を分離する。
⑤ Cは代謝中間体であるため,大量に生産することは理論的に不可能である。
正解①
問 9 微生物が産生する酵素は洗濯用洗剤の成分としても利用されている。次の①~⑤の酵素のうち,洗濯用洗剤に利用されているものを一つ選びなさい。
① セルロースを分解するセルラーゼ
② スクロースを分解するインベルターゼ→転化糖の製造
③ ペクチンを分解するペクチナーゼ →果汁・果実酒の清澄化、植物繊維の精錬
④ タンパク質を分解するキモシン
⑤ 過酸化水素を分解するカタラーゼ
正解①→セルラーゼは衣類繊維本体である結晶性セルロースには作用せず、非結晶の汚れ成分に作用する。また、アルカリ耐性が高く、アルカリ条件下の洗濯で安定した酵素活性を示す。さらに、表面活性剤の影響を受けない。
問10 水質を示す一般的な指標としてBOD(生物化学的酸素要求量,Biochemical oxygen demand)とCOD(化学的酸素要求量,Chemical oxygen demand)がある。これらに関して,次の①~⑤の記述のうち誤っているものを一つ選びなさい。
①BODは,水中の有機物などの量を,その酸化分解のために微生物が必要とする酸素の量で示すものである。
②CODは,水中の有機物と無機物,両方の被酸化物質を酸化するための酸素量を示す。
③BODとCODの値は,通常,高い相関を示す。
④BODに比べて,CODは測定に時間がかかる →逆。BODの方が時間がかかる。CODは30分-2時間程度
⑤BODの値が高い程,生物学的な汚水処理が有効である。
正解④
問11 ある遺伝子の塩基配列の一部を下に示した。下線を付した第10番目から第12番目のATGが開始コドンとして用いられるとすると,この遺伝子から合成されるタンパク質の第4番目のアミノ酸は何になるか。遺伝暗号表を見ながら,次の①~⑤のアミノ酸のうち,正しいものを一つ選びなさい。
【塩基配列】 5’-GTGTCGATCATGCCGGGTGCAATGCGCCAGTCCACGTCGAA-3’
① バリン(Val) ② アラニン(Ala) ③ アスパラギン酸(Asp) ④ グルタミン酸(Glu) ⑤ グリシン(Gly)
正解②→略
問 12 もともと大腸菌や酵母などの微生物細胞を宿主として製造されていたバイオ医薬品だが,動物細胞への遺伝子導入および発現が可能となると,動物細胞を宿主としたバイオ医薬品の製造が活発に行われるようになった。この理由として最も適切なものを,次の①~⑤の記述のうちから一つ選びなさい。
① 微生物細胞を宿主として用いた場合,製造されたバイオ医薬品の精製が不十分であると,投与患者に宿主微生物が原因の病気が引き起こされることがあったため。
② 微生物細胞は動物細胞に比べて厚い細胞壁で覆われているので,生産効率が一概に低かったため。
③ 微生物細胞を宿主として用いた場合,糖鎖が付加されないなどの原因で,本来の正しい構造のタンパク質ができない場合があったため。
④ 微生物と動物では,同一の遺伝子配列でも異なるアミノ酸配列のタンパク質が生産される場合があり,本来の正しい構造のタンパク質ができない場合があったため。
⑤ 微生物細胞を宿主として製造したバイオ医薬品は,動物細胞を宿主としたものに比べて,投与を好まない患者が多かったため。
正解③
問 13 生物ゲノムが明らかにされることによって将来起こりうる事項について,次の①~⑤の記述のうち,関連性の低いものを一つ選びなさい。
① 様々な病気の遺伝子マーカーが明らかにされ,病気の治療に役立つ。
② 遺伝子に基づく精度の高い美容サービスが行われる。
③ 個人の性格・資質が明らかになる一方,差別や倫理的な問題が生じる。
④ 人の行う多くの仕事がコンピュータに置き換わり,職業選択の幅が縮まる。
⑤ 様々な有用遺伝資源が見つかることにより,新たな生命産業が創出される。
正解④
問 14 バイオサイエンスを支える微生物産業は,サービス産業にまで拡大しているということができる。その根拠について,次の①~⑤の記述のうち該当しないものを一つ選びなさい。
① バイオスティミュレーション,バイオオーグメンテーションは,グリーンバイオテクノロジーに分類されるが,サービス産業であるということもできる。→stimulation刺激、augmentation添加
② 食品の汚染検査は,第三者機関が行う方がより信頼されるため,サービスとして事業が成立してくる。
③ 環境関連技術全体を見ると,大気汚染防止技術,水質汚濁防止技術,固形廃棄物リサイクル技術,環境監視・評価技術などがある。
④ 現在では多くの検査方法が,国際機関で議論・制定され,マニュアルとして配布されている。
⑤ 微生物の役割が重要な工業原料や生分解性プラスチックなどは今後その発展が期待される分野である。
正解⑤
問 15 遺伝子組換え技術の規制について,次の①~⑤の記述のうち,最も適切なものを一つ選びなさい。
① 遺伝子組換え技術が登場すると,その危険性が完全には否定できないという考えから,各国ですぐに法的に規制するようになった。
② 遺伝子組換え技術が登場すると,その危険性が完全には否定できないという考えから,各国で自主的に規制をするようになった。
③各国で始まった遺伝子組換え技術の自主的な規制の方法は国際的にほぼ共通したものであった。
④各国で始まった遺伝子組換え技術の自主的な規制の方法は国によって異なるものであり,特にわが国では厳しい規制が行われた。
⑤遺伝子組換え技術を規制する「カルタヘナ議定書」は,遺伝子組換え技術において先進国であるアメリカが中心となってつくられた。
正解②
[1] GC含量(GC-content)は、DNA分子中の窒素塩基のうちグアニンとシトシンの割合。
[2] DNA超らせん(DNAちょうらせん、DNA superhelix)とは、DNAの二重らせんにさらにねじれを導入したときに生み出される高次のらせん構造のことをいう。 DNAスーパーコイル(DNA supercoil)ともいう。