教育委員会/学校運営協議会/教育課程/教科書使用義務/懲戒と体罰


1. 文部科学省と教育委員会の組織と役割

 教育行政は、国レベルの組織と地方レベルの組織によって行われている。国レベルの組織は、内閣および総理大臣、文部科学省および文科大臣と関係省庁である。国レベルの教育行政の主要部を担っているのは文部科学省であり、全国的な視点から教育行政を立案し、教育に関する基準を設定する役割が付与されている。教育を取り巻く問題の多様化・複雑化により、文部科学省による教育行政の運用のみでは問題解決・改善が困難な場合、各省庁との連携した取組がみられるようになっている。

 地方教育行政の責任機関として制度化されたのが、教育委員会である。なお、教育委員会制度の意義は次の3点が指摘される。①政治的中立性の確保、②継続性・安定性の確保、③地域住民の以降の反映である。そして、教育委員会の基本理念は地方教育行政の組織及び運営に関する法律に規定されており、教育委員会はこの法律に基づいて教育行政を執行することが求められる。近年、いじめ問題など緊急事態への対応をめぐり、批判を受け、2014(平成26)年教育委員会制度が見直された。これまでの合議体の教育委員会制度は残し、教育委員長と教育長を一本化し、責任を明確化し、教育委員会を代表する新たな教育長を置いた。新たな教育長は地方自治体の長が直接任免すること。文部科学大臣は教育委員会の事務の管理・執行が法令違反の場合に関し、是正・指示ができるようになった。

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2. 学校運営協議会制度の概要と趣旨

 地域住民や保護者の学校運営への参画が進められている。教育基本法(13条)では、学校、家庭、地域住民がそれぞれの教育役割を自覚してうえで相互連携することが述べられている。「我が国の地方行政の今後の在り方について(答申)」(1998年)や「今後の学校の管理運営の在り方について(答申)」(2004年)では、保護者・地域住民などの意向を反映して行くこと、保護者・地域住民などの協力を広く得ること、学校の実情に関してアカウンタビリティを十分に果たしていくことなどを目的として、地域住民の学校運営への参画が提言された。

 具体的制度として、学校評議員制度や学校運営協議会(コミュニティ・スクール)制度が運営されている。「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(答申)」(2015年)が出され、複雑化・多様化した課題を解決していくために、学校の組織としてのあり方や、学校の組織文化に基づく業務のあり方などを見直し、「チームとしての学校」を作り上げることが大切であるとし、学校における業務の進め方や校務分掌のあり方を再構成することが求められている。

 チームとしての学校は、校長のリーダーシップのもと、カリキュラム、教育活動、学校の資源が一体的にマネジメントされ、教職員や学校内外の多用な人材が、それぞれに専門性を生かして能力を発揮し、子どもたちに必要な資質・能力を身に付けさせることができる学校とされている。

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3. 教育課程の編成

 教育課程は「学習指導要領」では「学校教育の目的を達成するために、教育の内容を生徒の心身の発達に応じ、授業時間数との関連において総合的に組織した各学校の教育計画である」とする。学校の教育目的・目標に関しては、教育基本法と学校教育法で規定されえており、指導内容の組織に関しては、学校教育法施行規則や学習指導要領において各教科等の目標や内容の基準が示されている。授業時数に関しては、学校法施行規則で各教科等の標準授業時数が規定されている。

 各学校が編成する教育課程は、これらの法令に従い、各教科、道徳、特別活動および総合的な学習の時間についてそれらの目標やねらいを実現するよう、教育の内容を学年に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した教育計画である。

 学習指導要領の法的拘束力については1976(昭和51)年旭川学力調査反対事件をめぐる裁判の最高裁判決において「教育の機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために、必要かつ合理的と認められる大綱的な基準」と判示し法的拘束力を認めた。

 そして、2003(平成15)年、文部科学省は学習指導要領を一部改定し、学習指導要領総則で、「すべての児童・生徒に対して指導すべき内容」でそれらは最低基準であるとする学習指導要領の性格が最低基準であるということ明確にした。

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4. 教科書の使用義務と無償措置

 「教科書」は教科書発行に関する臨時措置法第2条第1項で「小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及びこれらに準ずる学校において、教育課程の構成に応じて組織配列された教科の主たる教材として、教授の用に供せられる児童又は生徒用図書であつて、文部科学大臣の検定を経たもの又は文部科学省が著作の名を有するもの」とされている。教科書の使用義務は学校教育法第34条第1項で「文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない」と規定している。ただし、学校教育法附則第9条にて、高等学校や中等教育学校後期課程、特別支援学校において、検定教科書がない場合または特別な教育課程のため検定教科書が適切でない場合は、学校設置者の判断で他の教科用図書を使用することができると定められている。教科書検定とは、民間で作成された図書を文部科学大臣が教科書として適切であるかを審査し、合格したものを教科書として認められる制度である。

 なお、高等学校の教科書の採択方法については法令上の規定はないが、公立高等学校については、文部科学省は当該の教育委員会が採択を行うとしている。

 教科書の無償措置の根拠法は義務教育諸学校の教科用図書の無償に関する法律(1962年)と義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律(1963年)に定められ、1969年に小・中学校の全学年に対する無償給与が達成された。

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5. 懲戒と体罰問題

 『学習指導提要』によれば、学校で行われる懲戒は「児童生徒の教育上必要があると認められるときに、児童生徒を叱責したり、処罰したりすること」であると示されている。

 懲戒の法的根拠は学校教育法第11条に「校長及び教員は、教育上必要が認められるときは、文部科学大臣の定めるところにより、児童、生徒及び学生に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない」として規定されており、体罰は法律により明確に禁止されている。この条文で重要となるのは「教育上必要があると認められるとき」懲戒が認められるという点である。懲戒と体罰の境界線は、指導行為が個々の状況に応じて、教育上必要であると認められれば懲戒であり、そうでなければ体罰となる。

 出席停止については、学校教育法35条に位置づけがある。運用例は極めて少ないが、学校教育には、多様化、深刻化している児童生徒の生徒指導上の諸問題に対応するため、他機関との連携することや、出席停止制度を適切に運用していくことが求められている。

出席停止制度は、学校は児童生徒の安心・安全を確保し保障する責務があるため懲戒ではないとされている。これは、学校秩序の維持と義務教育を受ける権利を保障するためである。ただし、出席停止の適応にあたっては、「性行不良」であること「ほかの児童生徒の教育に妨げがある」と認められることの2点が基本的な要件となっている。

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参考文献

藤井 穂高 編 (2018)『教育の法と制度』ミネルヴァ書房


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