6. 教職員に関する法と制度
「教員」は教育基本法第9条に規定される。そして、教育職員免許法や教育公務員特例法により詳細な規定がある。
学校教育法第37条第1項には「校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員」など教員の必置義務が規定されている。
学校に置かれる職員の中で、最も数が多い教諭は、「児童の教育をくかさどる」ことを本務とする。教諭は授業を行うだけでなく、学級経営、生徒指導、課外活動の指導など多様な業務を行い、主任や主事を務め公務分掌上で重要な役割をはたす。
学校教育法37条に規定される「副校長」「主幹教諭」「指導教諭」は2008(平成20)年から設置された。これは、管理職に加え、各学年や教科ごとにリーダーとして主任や主事を設けることにより、教育の目的や方針を効果的に達成しようとするものである。
教員養成については戦後、教育職員免許法を根拠に開放制の方針が採られた。特別な制限を設けず多様な大学での養成教育を認め、幅広い人材を教職に導くことが目指された。しかし、1953(昭和28)年の教育職員免許法改正により課程の認定の受けた大学・学部のみ教員養成が認められるようになり、開放制に制限が設けられた。
公立学校の教員の採用は、教育公務員特例法第11条を根拠に、「選考」によるものとして任命権者は教育委員会の教育長が行う。「選考」は競争試験とは異なり、筆記試験のみの成績によって判断がなされるというものではなく、人物評価など複合的に評価がなされる。
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7. 学校経営に関する法と制度
学校教育法は第42条で学校評価に関する根拠規定を定め、第43条で学校の積極的な情報提供についての規定をしている。また、これらの内容を受けて、学校教育法施行規則において、自己評価とその実施義務、学校関係者評価とその実施の努力義務、および、それらの評価結果の設置者への報告を規定している。現在の学校には、組織マネジメントの手法の活用やエビデンス・ベースの学校経営が求められており、組織的で協働的で形成的な学校評価が重要となっている。
2007年の学校教育法改正により、副校長、主幹教諭、指導教諭を設置者の定めで設置できる改革がなされた。校長、副校長、教頭のリーダーシップによる意思決定の迅速化と明確化、次に、主幹教諭、指導教諭、主任等のミドルリーダーレベルと教諭の間で意思伝達の効率化が図られ、改革志向や応答性が高まることが期待されている。
学校では、授業や学級経営といった直接的な教育活動だけでなく、学校を組織として維持するための活動も行われている。例えば、生徒指導、安全教育、保健指導、進路指導、PTA活動、教育研究活動などである。多様な校務を効果的にこなすために、校務分掌のような役割分担が不可欠である。
2000(平成12)年学校教育法施行規則改正で職員会議は校長の職務の円滑な執行に資するたに設置されると位置づけられた。教育課題への対応等に対する職員間の意思疎通を図ることや、職員間の意見交換や連絡調整の役割を果たしている。
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8. 学校・家庭・地域の連携に関する法と制度
2006(平成18)年、教育基本法が全面的に改正され、「家庭教育」にかんする規定(第10条)が新設された。この第1項には、保護者が子どもの教育について「第一義的責任を有する」ことを確認する。そして、保護者による家庭教育の役割として「生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図る」ことをあげている。家庭教育を法律で定めることについては、国の介入として批判する向きもあるが、同法によって、家庭教育支援の努力義務が国および地方公共団体に課されることになった。
家庭での育児不安、地域の教育力の低下、学校での問題が複雑化・多様化するなか、学校と家庭・地域の連携が課題として指摘されている。学校週休5日制の実施は、子どもたちの学校外での学びや社会経験の場をいかに保障するかという課題を発生させた。
新学習指導要領においても、「よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る」という目標を学校と社会が共有し、連携・協働しながら、新しい時代に求められる資質・能力を子どもたちに育む「社会に開かれた教育課程」の実現を目指すことが示されている。
2015(平成27)年中央教育審議会答申で「地域学校協働本部」を全国的に整備することが提言された。地域が学校・子どもを応援・支援する一方的な関係ではなく、子どもの成長を軸として、地域と学校がパートナーとして連携・協働して地域の将来を担う人材育成が期待される。
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9. 教育行財政に関する法と制度
旧教育基本法第10条第1項においては「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」と規定されていた。教育が政治的支配や官僚的統制の下に置かれるべきではなく、教育の自主性と学問の自由を尊重して教育が実施されなければならないという考えに基づいており、現行の教育基本法第16条などのその考えは引き継がれている。
地方自治法に基づき、教育行政は地方自治と独立を原則としている。地方教育行政の責任機関として教育委員会が制度化されている。教育委員会制度の意義は政治的中立性の確保、継続性・安定性の確保、地域住民の移行の反映である。教育委員会は教育長および4人の教育委員で構成されている。教育長は、当該地方公共団体の長の被選挙権を有し、人格が高潔で、教育行政に関し見識を有する者の中から、地方公共団体の長が議会の同意を得て任命する。
教育財政は、国または地方公共団体が教育の目的を達成するために必要な財源を確保し、教育の各分野に分配、管理する活動である。学校教育法第5条を根拠に設置者負担主義がとられ、学校経費負担は設置者が負担することになっている。ただし、憲法の教育機会の均等、教育水準の確保、無償化の義務教育の理念を実現するために、公立の義務教育学校の教職員給与について、都道府県の支出額の1/3を国が負担する義務教育費国庫負担制度が設けられている。
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10. 生涯学習に関する法と制度
1949(昭和24)年、憲法・教育基本法体制の下、社会教育法が制定された。この法律には、公民館関連の条文も盛り込まれ、1959(昭和25)年の図書館法、1951(昭和26)年の博物館法の図書館、博物館と並んで、公民館が中核的な社会教育施設として機能を果たすことになった。
1981(昭和56)年、中央教育審議会は「人々の自発的意思に基づいて行う学習」を「生涯学習」として、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方とした。
1984~1987年に「戦後教育の総決算」を掲げ行われた臨時教育審議会は、教育改革の視点の1つとして「生涯学習体系への移行」を打ち出した。以後、戦後教育改革による「社会教育制度」と臨時教育審議会の答申を起点とする「生涯学習推進制度」が併存する状況が続いている。
地方においては1990(平成2)年に「生涯学習の振興のための施策の推進体制等の整備に関する法律」が制定され、生涯学習への取り組みが活発に展開されている。生涯学習を振興するための都道府県教育委員会の事業を示し、地域生涯学習振興基本構想の策定、生涯学習審議会の設置などを促す内容となっている。
全国一律の基準に従い管理・運営される学校と異なり、社会教育施設の運営や各施設の職員体制については法令による定めがない。職員の配置は設置者の運営方針に依存し、公立公民館・図書館・博物館は兼任・非常勤職員の増加が懸念される。
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参考文献
藤井 穂高 編 (2018)『教育の法と制度』ミネルヴァ書房