少子化を超えるおもちゃ市場の成長──「キダルト」とデジタル化の影響


日本のおもちゃ市場が近年急成長を遂げ、昨年度には初めて1兆円を超えました。この成長は「キダルト(Kidult)」と呼ばれる新しい消費者層や、デジタル技術の導入が大きな要因とされています。少子化が進む中、なぜおもちゃ市場は拡大を続けているのか、その背後にあるトレンドを見ていきます。

デジタル技術が生む新たな体験

おもちゃ市場の成長の一因として、社会全体のデジタル化の影響が挙げられます。特に子ども向けのおもちゃでも、デジタル技術を取り入れた新しい体験を提供する商品が増えています。国内外のメーカーが参加する「東京おもちゃショー」では、Wi-Fi対応の端末を使って絵文字だけでメッセージを送り合う、まるで秘密の暗号のようなコミュニケーションが楽しめるおもちゃが出展されました。これにより、スマートフォンに慣れた子どもたちに新鮮な感覚を提供しています。

大人が牽引する「キダルト」市場

おもちゃ市場のもう一つの大きな成長要因は「キダルト」という存在です。「キダルト」とは、子ども心を持ち続ける大人を指す造語で、彼らをターゲットにした商品が市場を支えています。少子化で子どもの数が減少しているにもかかわらず、市場が成長しているのはこのキダルト層が消費を拡大しているためです。特にトレーディングカードやカードゲームの人気は高く、昨年度には前年比18%増加し、市場全体の約3割を占めています。

大人向け商品が市場に新風を吹き込む

キダルト市場を狙った商品は、子ども向けとは異なる大人向けの本格的なデザインや仕様が特徴です。例えば、あるメーカーは15歳以上を対象にしたロボットやプラモデルの新ブランドを立ち上げ、従来の子ども向け商品では実現できなかったリアルさや精巧さを追求しています。これにより、昔のおもちゃと比べてその進化に驚く大人たちの需要を掘り起こしています。実際、こうした商品は国内外で多くの予約が寄せられており、海外、特に中国や韓国からの需要も高まっていることから、今後はアジア市場での展開も強化される見通しです。

懐かしさを呼び起こす定番商品の進化

定番商品の進化も、キダルト層を取り込む戦略の一環です。例えば、ヨーヨーの新シリーズでは、1997年に初めて発売された人気商品をリニューアルし、現代の技術を取り入れることで新たな魅力を加えました。これにより、親子二世代で一緒に楽しめる商品として、再び注目を集めています。特に、子ども時代にヨーヨーを楽しんだ大人たちが、その進化を体験することで、懐かしさと新鮮さを感じ、購入に至るケースが増えています。

小売業界もキダルトに注目

キダルト市場の成長に呼応して、小売業界も動き出しています。大手おもちゃ販売チェーンでは、全国の店舗にキダルト向けの商品コーナーを設置し、特に都心の店舗ではラインナップを充実させています。夕方以降は会社員や学生が多く訪れ、これまでとは異なる客層が商品を手に取る光景が見られるようになっています。この動きは、今後さらに拡大するキダルト市場を意識したものであり、消費者の多様なニーズに応えるために、商品ラインナップも増加する見通しです。

市場の未来と成長の可能性

日本玩具協会の専門委員は「おもちゃはすべての年齢層に向けた商品になっている」と述べ、キダルト層やインバウンド需要など、さまざまな新しい消費者層を取り込むことで市場がさらに成長する可能性を指摘しています。少子化が進む中で、従来の子ども向け商品に依存するだけではなく、大人や海外市場にも目を向けることで、さらなるビジネスチャンスが広がっています。


コメントを残す