意見
人類は石油などの化石燃料を使ってきた。化石燃料をエネルギー源として酸化させれば二酸化炭素が発生する。化石燃料を消費しつくす前にクリーンエネルギーシステムを開発しなければならない。太陽光を利用して電気を作る太陽電池に普及や水を原料に水素などの物質を作る人工光合成の開発が急がれる。
二酸化炭素濃度の加速度的増加
1860年頃、産業革命までは二酸化炭素濃度は増えていないのに対し、その後は加速度的に増加している。特に1945年第2次大戦後に石油を大量に使用するようになってからは著しい。
IPCCは2007年第4次評価報告や2014年第5次評価報告で「このまま放置すれば、温度上昇により大規模な気候変動、海面上昇、生態系への深刻な影響が出ることは目に見えており、各国政府は早急に二酸化炭素排出の抑制施策を実施すべきである」と警鐘を鳴らした。
二酸化炭素を減らす方策
大気中の二酸化炭素を減らす方策として、以下の方策がある。
(1) 省エネルギー、エネルギーの無駄を減らし、化石燃料の使用を抑制し、二酸化炭素排出を少なくする。
(2) 二酸化炭素の貯留、CCS (Carbon dioxide capture and storage)、例えば、二酸化炭素を地中深くに閉じ込める。
(3) 新エネルギーの使用、例えば、水素エネルギー。
(4) 炭素資源利用、CCU (Carbon dioxide capture and utilization)、二酸化炭素を還元し有用化合物を作り利用する。
人工光合成は上記の(3)と(4)を満たす方策である。(3)は人工光合成で水素製造を行うことで達成される。炭素を含んだ人工石油のようなものを作ることが可能であれば、カーボン・ニュートラルとなる。(4)は二酸化炭素から燃料以外の製品を作り出し長期利用すればカーボン・マイナスとなる。
エネルギーの持続可能性
エネルギーの持続可能性の観点から、人類が使用するエネルギー資源は、(A) 再生ができないエネルギーと(B) 再生可能エネルギーがある。再生ができないエネルギーは、石油、天然ガス、石炭などの化石資源であり使ったら補うことができないものである。再生可能エネルギーは、バイオマスエネルギーや太陽電池、風力発電、水力発電など使っても補うことができるものである。
化石燃料の採掘可能年数は消費量によって変動があるが、石油が42年、石炭が122年、天然ガスが60年、ウランが100年、シェールガスが100年(BP統計2009、OECD統計2007)となっている。この統計は新規の油田やシェールガスなどの新技術の開発により伸びて来たが、より強い強度で資源を搾り取っていると言っても良い。持続可能性の限界は確実に近づいている。
再生可能エネルギーは、資源が枯渇することはない、人類が現在1年で使用しているエネルギーを1とすると、地球に届いている太陽光エネルギーは年間約10,000、光合成によるバイオマス生産が年間10である。なお、化石資源の採掘可能量は残り約300と推定されている。
なお、バイオマス生産が10あり、人類のエネルギー消費量が1であるから、バイオマスを10%使えば良いという単純な話ではない。環境における10%は生態系に大きな影響を及ぼす、特に、一次生産者である植物は他の消費者生態系に直接影響が発生する。そのため、新たに太陽光エネルギーを利用する場所としては、砂漠、寒帯、都市部、海洋など現在植物が繁茂していない所であるある必要がある。
資源調達の容易さ
光合成のエネルギー変換効率は通常1%以下であり、太陽光発電が最大15%程度出せるのに対して低い。それでも、人工光合成に期待が持てるというと、システム構築の材料調達の容易さと廃棄物処理が容易であるからである。生物を構成する元素は硫黄、リン、酸素、窒素、炭素、水素等であり、レアメタルや貴金属は不要である。そして、長きにわたり、地球環境を支え続けたという実績がある、その上で工学的なアプローチにより、収量改善、エネルギー変換プロセス解明が進めば、環境維持の大きな主戦となると考える。