
春から中学生になる息子をもつ私(48)は、「スマホは子どもには早すぎる」と感じつつも、友達と比べて持たないことで孤立しないか悩んでいた。そんな折、「未成年者のSNS利用を国レベルで禁止する」というニュースを目にし、フロリダ州に赴いて現地の動きを取材した。
フロリダ州のSNS禁止法概要
2024年3月、フロリダ州は14歳未満のSNS利用を禁止する法律を可決・署名した。対象は画像や動画をアルゴリズムで配信する機能を備えたサービスであり、インスタグラムやTikTokなどが想定される。14歳以上15歳以下は保護者の同意が必要とし、違反企業には罰金が科される。ただし訴訟により施行時期は未定だ。
保護者の賛同の声
取材で多くの親が「子どもをSNSの有害な影響から守りたい」と賛成意見を示した。
- 13歳女子の母親:「一度使い始めると取り上げにくい。禁止で外遊びが増えるだろう」
- 14歳女子の母親:「適切に使えないなら害しかない」
- 16歳女子の母親:「スマホを置いて現実を見なさいと言ってきた。法律は必要だ」
一部には「中国の規制を見習うべき」と主張する親もいた。
SNSが子どもに及ぼす影響
アメリカの高校生は平日5時間以上SNSを利用するとの調査結果があり、日本(1~2時間未満)を大きく上回る。国家プロジェクト「ABCD-STUDY」では、約1万1000人の子どもを対象に脳の発達を追跡。カリフォルニア大学の小児科医ジェイソン・ナガタ博士は、SNS使用時間が1時間増えるごとに摂食障害リスクが60%上昇し、うつや睡眠障害、心血管リスクの増大も示唆されたと報告する。一方、ナガタ博士は「年齢で一律禁止は非合理的。教育的メリットもある」と慎重な立場をとる。
学校現場での実践例
ティンバー・クリーク高校(公立)では、校内でのスマホ原則禁止を導入。生徒自身による管理を重視し、移行期間中に何度もルールの意義を説明した。結果として昼休みにはテニスやDJセットなどで生徒同士の交流が活発化し、コミュニケーション能力の向上が見られたという。校長のワスコ氏は「再び会話が生まれ、生徒が大人に育つ機会になった」と振り返る。
法律だけでは解決しない現実
法律による規制を支持する親が多い一方で、禁止だけでは子どもの秘密アカウントや年齢偽装を防ぎきれないとの声もある。法律が施行されれば、親子でのSNS利用ルールを改めて協議する契機にはなるが、子ども自身の感情や行動をしっかりと見極め、対話を続けることが肝要だ。
わが家のルールづくり
帰国後、周囲の保護者と情報交換すると「家庭だけでは限界がある」という嘆きが多かった。私の息子は入学前課題で「スマホは脳を壊すか」をテーマに作文を書くことになり、結局は入学後の様子を見てスマホ導入を検討すると決めた。禁止や一方的な制限だけでは解決しない。まずは親として子どもの思いに耳を傾け、社会全体で支えるしくみを探ることが必要である。
フロリダ州の挑戦は、子どものSNS利用をめぐる議論に新たな視点を提供する一方で、法律の枠組みに依存しすぎない総合的なアプローチの重要性を示している。親子の対話と社会の連携によってこそ、子どもたちの健全な成長が可能になるのである。