平成30(2018)年度第2学期単位認定試験
問 1 「物質の構成」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。
① 物質には混合物と純物質があり,純物質には化合物と単体がある。
② 混合物における物質の混合比は任意に変化させることが可能である。
③ 物理的性質の違いを利用することにより,混合物を純物質に分離することが可能である。
④ 元素によっては複数の単体を持つものがある。
問 2 「原子の電子構造と周期表」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。
① 周期表は元素を原子番号の順番に並べた表であり,周期的に類似した化学的性質を持つ元素が現れる。
② 主量子数3の軌道には3s, 3p, 3dの3種類がある。
③ 19Kの安定な電子配置は(1s)2 (2s)2 (2p)6 (3s)2 (3p)6 (3d)1である。
④ 貴ガス元素が化学的に類似した性質を示すのは,最外殻の電子配置がいずれも(np)6であることによる。
3 「有機分子の結合や異性体」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。
① 炭化水素C5H12には3つの異性体がある。
② 一対のsp混成軌道は,互いに180°の方向に広がりをもつ。
③ エチレンの二重結合は,2本の結合からなる。
④ ブテンCH3CH=CHCH3の立体異性体のうち,シス体の方がトランス体に比べて熱力学的に不安定である。
問 4 「分子間力」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。
① 極性分子は,電気双極子モーメントを持つ。
② ファンデルワールス力に寄与する配向力,誘起力,分散力のうち,一般にその寄与が最も大きいのは分散力である。
③ 一般に分子量が大きい分子ほど沸点が高い傾向にあるのは,大きな分子ほど分極率が大きく分散力が大きくなるためである。
④ 水素原子を含む分子間には,水素結合が生じる。
問 5 「分子の色」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。
① 紫外線は可視光に比べて,電磁波としての波長は短く,1光子あたりのエネルギーは大きい。
② 分子は自らが持つエネルギー準位間隔に相当するエネルギーの光子を吸収・放出する。
③ 可視光の吸収・放出によって,主に分子内の電子の状態変化が起こる。
④ ヘキサトリエンC6H8のπ電子を1次元の箱の中の粒子として扱ったとき,最も低い励起エネルギーを持つのはn=6→ 7の遷移である。
問 6 「有機化合物の異性体」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。 ① 3つの不斉炭素原子を有する化合物に可能な立体異性体の数は最大8種類である。
② 立体異性体のうち,鏡像異性体でないものをジアステレオマーという。
③ メチルシクロヘキサンの配座異性体では,エクアトリアル体のほうがアキシアル体に比べ,熱力学的に有利である。
④ エタノールとジメチルエーテルとは互いに鏡像異性体である。
問 7 「溶体」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。
① 地球大気は気体溶体の一種であり,O2は溶質であると言える。
② 溶媒,溶質にはそれぞれ気体,液体,固体を考えることができるから,これら任意の組み合わせとして9種類の溶体が存在する。
③ 炭酸飲料の保存において圧力が高められているのは,圧力が高いほど液体に溶けるCO2の量を増やすことができるためである。
④ 沸点上昇や凝固点降下は,溶質のモル分率と関係のある現象である。
問 8 「ブレンステッド・ローリーの酸塩基」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。
① ブレンステッドとローリーは,酸をプロトン供与体,塩基をプロトン受容体として定義した。
② 大きな酸解離指数pKaを持つ物質ほど強い酸である。
③ 酸HAの解離によって生じるA–はHAの共役塩基と呼ばれ,HAが弱酸であるほどA–は強い塩基である。
④ 雨水のpHは,大気中のCO2の溶解を考慮するとおおよそ5.6となり,酸性雨とはこれよりも低いpHを持つものを指す。
問 9 「酸化還元反応」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。
①現代的な酸化還元の定義において,酸化は分子種に電子を与えること,還元は分子種から電子を取り去ることである。
②FeO+CO→Fe+CO2の反応において,Feの酸化数は2から0へと減少し,鉄は還元されている。
③標準起電力は,酸化還元反応を構成する半反応の標準電極電位の差で与えられる。
④硫酸銅水溶液に鉄くぎを浸すと,銅が析出する。このことから Cu2+(aq)+e2-→Cu(s) , Fe2+(aq) e2-+Fe(s)の2つの還元半反応に対する標準電極電位は,後者の方が低いことが予想される。
問10 「酸化還元と官能基変換」に関する次の①~④の記述のうち,誤っているものを一つ選べ。
①NaBH4は穏やかなヒドリド還元剤であり,ケトンやアルデヒドとは反応するが,エステルは還元しない。
② ニトリル[RC≡N]にR’MgXを反応させ,加水分解すると,ケトン[RCOR’]が得られる。
③ アルコール[RCH2OH]からアルデヒド[RCHO]への変換では,炭素の酸化数が1つ上昇する。
④ 末端オレフィン[RCH=CH2]から1-オール [RCH2CH2OH]を得るには,ヒドロホウ素化反応を用いるとよい。
問1 正解[ ② ] 水に溶ける食塩の量には限度があるように,混合物における物質の混合比は必ずしも任意には変えることができない。したがって②は誤り。
問2 正解[ ③ ] K19の安定な電子配置は(1s)2(2s)2(2p)6(3s)2(3p)6(4s)1である。したがって③は誤り。マーデルング則によれば,3p軌道の次に電子が入るのは3d軌道でなく4s軌道であることに注意。
問3 正解[ ③ ] エチレンの二重結合は,1本のσ結合と1本のπ結合からなるため,③は誤り。
問4 正解[ ④ ] 水素結合は電気陰性度の大きな原子の間に水素原子が介在することによって生じる。炭素の電気陰性度は水素とさほど変わらないから,2つのメタン CH4の間には水素結合は生じない。したがって④は誤り。
問5 正解[ ④ ] ヘキサトリエンには6つのπ電子が存在し,基底状態ではn = 3までの準位に2つずつ電子が入っている。このとき,最も低い励起エネルギーを持つのはn = 3 → 4の遷移であるから④は誤り。
問6 正解[ ④ ] エタノールとジメチルエーテルとは互いに構造異性体であるから,④は誤り。
問7 正解[ ② ] 気体と固体は互いに一様に混じり合うことはないから,②は誤り。
問8 正解[ ② ] 小さな酸解離指数pKaを持つ物質ほど強い酸であるから,②は誤り。
問9 正解[ ① ] 電子の授受によって酸化還元を定義する際,酸化は分子種から電子を取り去ること,還元は分子種に電子を与えることである。したがって①が誤り。
問10 正解[ ③ ] アルコール[RCH2OH]からアルデヒド[RCHO] への変換では,炭素の酸化数が2つ上昇する。したがって③が誤り。