伝統的安全保障と非伝統的安全保障の違いや特徴について
伝統的安全保障は自国の生存、繁栄、価値を脅かすような軍事的脅威および自国が属する地域の戦略的な安定に対する脅威に対して、外交、軍事的の強化、同盟の形成などの手段を通して確保しようとする試みである。例えば、日本から見ると北朝鮮の核実験やミサイル発射、ロシア、中国と領有権をめぐって対立する領土問題などは非伝統的安全保障に関わる問題である。
伝統的安全保障には、諸外国からの侵略や攻撃に対して自国の安全、繁栄、価値を保障することを意味することがある。国際社会はアナーキーであるために、各国は自国の安全を保障する手段として軍事力を中心とした自国の力を増強しようとする。各国は力の競争となり各国は軍事同盟などを含め勢力均衡が図られる。しかしながら、軍事同盟間の緊張が高まり、また突破事象により、紛争が発生すると、国家や国家群を巻き込んだ大規模戦争に発展する弊害がある。
これに対して、非伝統的安全保障は非軍事的かつトランスナショナルな性質を持ち、気候変動、テロリズム、海賊、組織的犯罪、貧困、金融危機、感染症など「新しい脅威」における多数の人々の安全を確保することが目的とされる。
非伝統的安全保障という概念に注目が集まったのは、非伝統的安全保障に関する問題が、国家の安全保障に大きな影響を及ぼすようになったからである。冷戦が終結し、大国間で戦争がおこる蓋然性が低下する一方、グローバル化や技術発展によってこれらの非軍事的問題領域が国家の安全保障に対して脅威となることが改めて認識されたことで関心が高まった。
非伝統的安全保障においてテロリズムが取り上げられる。9.11テロはその効果がメディアによって世界にリアルタイムに発信されたテロであった。グローバリゼーションの進展と技術発展によって、テロリストが国際ネットワークを活用してより破壊力のある兵器を入手し活用することが可能となった。現在、アメリカの安全保障上の最大の懸念の1つはテロリストに大量破壊兵器がわたり、他国から通常兵器で攻撃されたときと同様の被害を受ける可能性である。まさに、伝統的安全保障に比べ非伝統的安全保障は複雑化したといえる。