
九州大学の佐々木裕之特別主幹教授を中心とする研究チームは、三毛猫の体毛の色(黒と茶色)を決定する遺伝子を特定したと発表した。発表は5月15日付の科学誌「カレントバイオロジー」に掲載されている。
三毛猫の特徴である白・黒・茶(オレンジ)のまだら模様は、これまで白い毛に関与する遺伝子のみが明らかになっていた。一方で、黒色や茶色の毛を決定づける遺伝子については、120年以上にわたり謎のままであった。
研究チームは福岡市内の動物病院において診療過程で採取された18匹の猫の試料を詳細に解析した。その結果、茶色の毛を持つ猫には、X染色体上の「ARHGAP36」という遺伝子の一部が欠けていることを発見した。さらに追加で調査した50匹以上の猫や、米国の猫遺伝子データベースでも同様の結果が確認された。
この「ARHGAP36」遺伝子は、性染色体のうちX染色体に位置しており、一部が欠損するとメラニン色素の生成が抑制され、代わりに茶色の色素が増加し毛が茶色になる。遺伝子に欠損がない場合は、毛が黒色となる。
また、三毛猫の雌はX染色体を2本持ち、それぞれ茶色型と黒色型の遺伝子を有しているが、実際に働く染色体は1本のみである。雄はX染色体が1本のみのため、三毛猫の雄は極めて稀な存在である。
今回の発見により、長年未解明だった三毛猫の毛色形成の仕組みに科学的な説明が与えられた。この成果は、動物遺伝学や獣医学の分野にとっても大きな前進といえる。