いじめ防止と生徒指導


生徒指導とは

 中学校・高等学校学習指導要領(中2017[H.29],高2018[H.30])では、「生徒が、自己の存在感を実感しながら、よりよい人間関係を形成し、有意義で充実した学校生活を送る中で、現在及び将来における自己実現を図っていくことができるよう、生徒理解を深め、生徒指導と関連付けながら、生徒指導の充実を図ること」[1]と述べられている。

 つまり、生徒指導は、学校生活の中で、学級・ホームルームの中で、自己の存在感を十分に感じさせながら、教師との信頼関係を基盤とした人間関係はもとより、生徒相互間のより良い人間関係を形成させ、有意義で充実した学校生活を送らせるとともに、一人ひとりの生徒理解を深め、生徒の個性に内在する価値を見いだし、それを引き出すことに努め、教育指導が機能する授業と関連を図りながら、現在及び将来における自己実現を図っていけるように支援する営みといえる。

大津中2いじめ自殺事件

 2021年1月21日、最高裁において大津中2いじめ自殺事件の最高裁判決が出された。元同級生2人に賠償が確定した。「大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が2011年10月に自殺したのはいじめが原因だとして、生徒の両親が元同級生や市に7720万円の賠償を求めた裁判で、……元同級生2人の加害行為と自殺の因果関係を認めつつ、一審の約3750万円から約400万円に賠償額を減らした二審・大阪高裁判決が最高裁で確定した。

 この問題は、当初「けんか」と判断した学校側の対応に批判が集まり、13年にいじめの早期発見や報告を学校に義務づける「いじめ防止対策推進法」ができるきっかけになった。」[2]教師にとって、どこから「いじめ」と判断し、対応すべきであるのか、生徒の生命と学習する権利を擁護するために未然防止にどのように取り組むべきかを考えさせられる事件であった。司法判断も約10年を要したことも考えると、「いじめ」をどこまで罪を問うのか難しい問題でもある。加害者生徒も今は23歳である。

 2013年大津市の中学生いじめ自殺を機に、第2次安倍政権の教育再生実行会議が「道徳の教科化」提言その後、道徳の教科化もなされた。

いじめを予防する生徒指導

 道徳の教科化は、生徒の情操教育を含め、いじめ防止の1つの柱となった。生徒に評価を含め、道徳を教えるということは、教師の人格が陶冶されたものである必要がある。生活態度、全人格、人物を生徒からも見られるということになった。教師が尊敬されるようでなければ、道徳教育はなしえない。教師が聖職であるような、崇高さを求められていて、荷が重いと思うが、最低限、法に触れる行為を行わないということが必要である。

 しかし、どんなに素晴らしいであっても教師1人でいじめ防止に対応することは困難である。学校全体において、連携し、「チーム学校」として、生徒指導、いじめ防止に取り組むことが必要である。

参考文献

佐々木 正治(2019)『新中等教育原理』福村出版

朝日新聞


[1] 中学校総則第1章第4の1(2)、高等学校総則第1章第5款1(2)

[2] 朝日新聞 2021年01月26日 朝刊 3面(社会面)


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