「食料・農業・農村基本法」における政策理念、政策手法、政策内容について、「農業基本法」との違いにも触れながら述べる


1999年に制定された「食料・農業・農村基本法」は、農業政策を大きく転換させた。これまでは、「農業基本法」であった。

「農業基本法」では、戦後、経済が成長するなかで、農業と他産業との間の生産性と従事者の生活水準の格差是正を目指し、いわゆる「選択的拡大」等の生産対策、価格・流通対策、構造対策を講じられた。これに対し、「食料・農業・農村基本法」では、農業・農村に期待される「食料の安定供給の確保」と「多面的機能の十分な発揮」、その基盤となる「農業の持続的な発展」と「農村の振興」の4つの基本理念が掲げられ、食料・農業・農村分野において講じていくべき政策体系が打ちだされている。具体的には、食料分野に関しては、「良質な食料を合理的な価格で安定的に供給する」、「食料の安定供給については、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行う」、「不測の事態においても食料の供給の確保が図られなければならない」等とされている。農業分野に関しては、必要な農地、農業用水、担い手等を確保し望ましい農業構造を確立するなどとされている。また農村分野では、農業の生産条件の整備、生活環境の整備その他の福祉の向上により、農村の振興を図るなどとされている。

 特に、担い手の高齢化、農村の人口減少、農地面積の減少などの課題がみられ、それらを解決するために、新たな政策体系として「国民は安全と安心を、農業者は自信と誇りを得ることでき、生産者と消費者、都市と農村の共生を可能にする」ことを「食料・農業・農村基本法」は目標にしている。

 農業基本法が農業者を対象とした産業政策としての理念であったのに対し、食料・農業・農村基本法は、農業問題を生産者の問題にとどめず、国民生活の安定向上、さらに国民経済の健全な発展を図る上でも重要な役割を果たすと規定されている。

 「食料・農業・農村基本法」において、地域政策として農村地域の振興が目標として掲げられたことを受けて、2000年度から中山間地域等直接支払制度が導入された。これは、中山間地域を対象として、農地が有する多面的な機能を維持することを目的とした農地の保全、生産や地域の継続的な活動に対して一定の助成金が支給される制度である。

 持続可能な社会の実現のために、農村の果たす役割は大きくそれを具体的に支える法制度に変化したと言える。


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