警察庁は、2025年3月24日からマイナンバーカードと運転免許証を一体化させた「マイナ免許証」の運用を開始する方針を固めました。この新制度は、従来の運転免許証と異なり、希望者はマイナンバーカードのICチップに運転免許証の情報を記録し、1枚のカードで両方の機能を持たせることができるというものです。これにより、行政手続きの効率化やデジタル化がさらに進むことが期待されています。
1. 「マイナ免許証」の選択肢と利便性
「マイナ免許証」を取得するか、従来の運転免許証を使い続けるかは個人の自由であり、両方を持つことも可能です。従来の運転免許証が廃止されるわけではなく、引き続き使用できますが、マイナ免許証を選択することで、手続きが簡素化されます。例えば、引っ越しや結婚による住所や氏名の変更手続きは、従来であれば自治体と警察の両方で行う必要がありましたが、マイナ免許証を取得すれば、自治体での手続きのみで完了します。
2. 免許更新手続きのオンライン化
もう一つの大きな利点は、優良運転者や軽微な違反のみの一般運転者に限り、運転免許の更新時の講習をオンラインで受けられるようになることです。これまで免許センターや警察署で講習を受ける必要がありましたが、今後はパソコンやスマートフォンを使用して自宅での受講が可能になります。ただし、視力検査や免許証の写真撮影、違反運転者の講習は引き続き運転免許センターや警察署で行う必要があります。
3. 海外での利用と手数料の見直し
「マイナ免許証」と従来の免許証の両方を持つ選択肢が用意されているのは、フランスやイタリアなどの国で、日本の従来の免許証が必要とされる場合があるためです。さらに、マイナ免許証を選択すると、運転免許の取得や更新時の手数料が引き下げられます。新規免許取得時の手数料は、マイナ免許証の場合1550円に引き下げられ、従来の免許証では2350円に値上げされます。更新時も同様に、マイナ免許証は従来より安くなり、従来の免許証は値上げされます。両方の免許を持つ場合は、手数料が追加される形となります。
4. マイナ免許証の情報とセキュリティ対策
「マイナ免許証」のICチップには、運転免許証の番号、有効期限、免許の種類、条件、顔写真などが記録されます。これにより、カードの表面には有効期限などの印字はされません。運転免許証の情報はICチップに集約されるため、持ち運びが簡単になる一方で、セキュリティ面の懸念も浮上しています。警察庁は、マイナンバーカード作成時に本人確認を厳格に行い、情報登録時に誤りがないよう徹底した確認を行うことで、情報の誤登録や不正利用を防ぐ対策を講じる予定です。
また、マイナ免許証の有効期限は専用の読み取りアプリで確認でき、更新時期が近づくと通知されるサービスが導入されます。従来通り、更新通知のハガキも送付されるため、更新時期を忘れる心配も少ないでしょう。
5. 紛失時の対応と再発行手続き
もし「マイナ免許証」を紛失した場合、再発行にはいくつかの手順が必要です。マイナンバーカード自体を紛失した場合、まず自治体でマイナンバーカードを再発行し、その後、運転免許センターで「マイナ免許証」を再発行する必要があります。この際の費用は、マイナンバーカードの再発行に800円、「マイナ免許証」の再発行に1500円がかかります。逆に、従来の運転免許証を再発行する場合は、警察署で手続きができ、2550円の手数料が必要です。
6. 新制度への反応と懸念
新宿駅前で行われたインタビューでは、多くの人が「マイナ免許証」の利便性を歓迎する一方で、不安の声も聞かれました。特に、一部の利用者は、1枚のカードに多くの個人情報が集約されることへの懸念を示しています。個人情報の漏洩や紛失時のリスクについての懸念があり、政府はさらなる情報保護の強化が求められるでしょう。
また、持ち歩くカードが少なくなることを喜ぶ意見もある一方で、紛失した際に両方の機能を一度に失うリスクについても不安が残っています。この点について、警察庁はセキュリティ対策を強化し、間違いのない運用を目指すとしています。
「マイナ免許証」は、行政手続きのデジタル化と効率化を推進する重要なステップとなります。運転免許証とマイナンバーカードを一体化することで、手続きの簡素化や利便性の向上が期待されますが、セキュリティ面での課題や、利用者が感じる不安に対する適切な対応も不可欠です。今後の施行に向けて、警察庁は丁寧な説明と万全の準備を進めるとしています。